建設業界では、外国人労働者の数が日に日に増えている印象がありますよね。
人出不足の業界ですので、これは必然の流れなのでしょう。
ところで建設業界で外国人技能実習生等を雇い入れる場合は、建設キャリアアップシステムへの登録が義務となっていることはご存知でしたか?
以前から雇用している場合は強制ではありませんが、新たに受け入れる場合は必ず登録しなくてはなりません。
もちろん技能者となる技能実習生等だけではなく、雇い入れる側の事業者も登録義務があります。
この根底には外国人技能実習生の失踪という問題があり、業種別でいうと建設業界が最も多いという現実があります。
今回は、この外国人技能実習生のビザ・在留資格と建設キャリアアップシステム、そして失踪問題について書いていきたいと思います。
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ビザ? 査証? 在留資格?
外国人が日本で働くには「在留資格」が必要です。
一般的にビザと呼ばれていますが、ビザとは査証のことであり在留資格とは別物です。
しかし、正確ではないですが、ここではあえて分かりやすさ重視で在留資格のことを「ビザ」と記載していきたいと思います。
ちなみに、査証は日本に入国する際に必要なもので、在留資格は日本に滞在するために必要なものです。
具体的には90日以上の長期滞在や報酬を得る活動をする場合は必要となります。
働けるビザは?
ビザ(在留資格)には、いろんな種類があり、その種類によって日本滞在の目的や期間が違ってきます。
その中で就労できるビザ、つまり働くことが認められるビザと、働くことは出来ないビザがあります。
働くことが認められるビザの中にも、身分や地位によって制限なく働けるビザ(地位等累計資格)と、定められた活動を行うために日本に在留できるビザ(活動累計資格)があります。
例えば「日本人の配偶者等」というビザ(在留資格)がありますが、これは身分や地位の方であり、就労制限はなく、どんな仕事に就くことも可能です。
こちらの種類のビザは他には「永住者」、「永住者の配偶者等」、「定住者」だけです。
もう一方の定められた活動を行う方のビザは多くあり、それぞれの「仕事に対応したビザ」となります。
これが、一般的に「就労ビザ」と言われるものです。
就労ビザの他にも、就労可能なビザはいくつかありますが、ここでは割愛しておきます。
建設業者が外国人労働者を雇い入れる場合の外国人のビザは、就労ビザである「技能実習(1号、2号、3号)」それに「特定技能(1号、2号)」あとは就労ビザではありませんが「特定活動」があります。
特定活動は「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」を行えるビザで、建設業界としては、外国人建設就労者受入事業という東京オリンピック・パラリンピックまでの時限措置の受入れがあります。
技能実習と特定技能
そもそも技能実習という在留資格は「途上国への技能移転」を目的としてるのですが、「安価な労働力」として使われているのが現実です。
そして2019年4月、外国人労働者の受入れ拡大のためスタートした新しい在留資格が「特定技能」です。
移民政策を行っていない日本では、外国人の単純労働は原則禁止となっていましたが、人手不足の14の業種について「相当程度の知識又は経験」を必要とする業務に従事する「特定技能1号」と、より専門性の高い「特定技能2号」が新設されたのでした。2号は在留期間の更新制限がなく家族滞在も可能となります。
「相当程度」という言いまわしがみそですが、実際のところは人手不足解消のために、外国人に単純労働を認める感じの就労ビザです。
しかし、その利用は低調で、人手不足の現場は実習生や留学生と言う名の「労働者」に依存する状態が続いています。
※留学生はその名の如く留学するためのビザなので就労ビザではありませんが、「資格外活動」という許可を取ることで、ビザで許可されている活動の範囲外の活動が出来るようになり、留学生の場合は、週28時間以内の労働がOKとなります。
特定技能は技能実習を終えた者の取得などが見込まれていましたが、初年度(2019年)想定は最大4万7000人を見込んでいたところ、実際にはたったの520人となっています。
特定技能は試験があり、高い日本語レベルが求められますので、わざわざそんな険しい道を選ぶ人も少なく、また、特定技能で日本に滞在できたとしても、それでちゃんと稼げるのかどうかも疑問なところもあるのでしょう。
キャリアアップシステムもそうでしたけど、国の想定ってこんなんばっかですね。
一方実習生は毎年増え続け、2019年は約38万3千人と前年より7万5千人増え、在留資格別で最も増えるという結果となりました。
技能実習にも1号、2号、3号、そして「イ」「ロ」といった区分がありますが、号数が多いほどベテランで技能があり、イとロは受入れ方式の違いを表しています。
※上記に出てくる人数は全ての業界を含めた人数です。
技能実習生の失踪
外国人技能実習生は、ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイ、カンボジア、ミャンマーなどの方が多いです。
そして、日本で得た職場から姿を突然消す技能実習生は後を絶ちません。
その人数は毎年増え続け、2018年は9,000人を超え、2019年もそれを超えてくると思われます.
ちなみにこの失踪者数は、技能実習生の30人に1人に近い割合にあたります。
実際、当事務所がお手伝いさせて頂いている建設業者さんでも雇い入れた外国人労働者が失踪はどうしても起こっています(特に扱いが悪いわけではありません)。
これは、それぞれの母国から日本へ送り出す仲介業者の誇張した宣伝にも原因があり、元々聞かされていた話よりも遥かに稼げない実情があるのです。
しかも、来日前に徴収される手数料等はもろもろで100万円以上になることもあり、その借金を背負ってやってくる方も多いのです。
結果、不安定ではあるものの、より稼げるヤミ就労に行きついてしまうんですね。
ヤミ就労の仕事自体は特に違法な仕事というわけではないのですが、技能実習生には職場の変更が原則認められないのでヤミ就労となるわけです。
失踪後は外国人ブローカーがフェイスブックなどのSNSで出している求人に応募する形が多く、そこから人材派遣会社にあっせんされ、建設現場や製造会社、介護事業所や農家などに派遣される流れです。
最近では、ブローカーが事業所に直接斡旋するケースも増えているようです。
雇う側にとっても、正規の実習生を受け入れるには、来日前約半年の研修費用などを負担し、監督機関などに多くの書類を提出しなければならなど負担も大きいため、斡旋されてきた外国人労働者の提出した在留カードが偽造だろうと分かっていても暗黙の了解で雇うという構図になっています。
技能実習生の受け入れ側と、技能実習生双方の建設キャリアアップシステムへ登録の義務化の背景には、技能実習生の失踪の増加が背景にあるわけですが、果たしてどれほどの効果が出るのでしょうか・・・