「建設キャリアアップシステム」とは、建設現場で働く職人や現場監督の就業実績や資格、社会保険の加入状況などをICカードに蓄積し、経験を〝見える化〟するシステムですが、このシステムに登録することで、事業者(会社や個人事業主)にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
また、逆にデメリットはあったりするのでしょうか? そして、費用はどれくらいかかるのでしょうか?
そこのところを、書いていきたいと思います。
● 技能者(職人さんなど現場で働く人)のメリット、デメリットは コチラ へ
目次
事業者(建設会社)のメリット
事業者としてのメリットは、以下のような事が考えられます。
- 技能者の就業状況を簡単に確認
- 現場の入場管理等の効率化
- 雇用する技能者のレベルが見えることから、良い職人を育て、雇用する会社は評価され受注確保に繋がる
- 適正な評価と待遇を受けられる期待から、若手の人材確保に繋がる
- 下請の専門工事会社の実力を客観的に把握しやすくなる
- 経審の評点アップ
- ゆくゆくはエンドユーザーである個人が専門工事会社を選ぶ時代になるかもしれない
- 作業員名簿作成の自動化
- 施工体制台帳作成の自動化
- 建退協関係事務の効率化(2023年には電子申請に以降)
- 社会保険加入状況確認の効率化
まずは、技能者(従業員)の管理と事務の効率化という効果が目に見えてありますが、受注確保や人材確保に繋がる可能性に期待したいところです。
事業者(建設会社)のデメリット
- 登録に手間がかかって面倒
- 登録料や利用料がかかる(利用料は元請けのみ)
- 元請はカードリーダーを設置しなくてはいけない
- 優秀な人材の引き抜きへの不安
デメリットは、こんなところでしょうか。
ただ小規模な現場では、カードリーダーの設置負担がハードルになっている部分がありますが、カードリーダーの設置なしで、スマホを使っての顔認証による入退場管理などの実証事件を10月から始めるようです。
そして、2021年度からの実用化を目指しています。
けど、登録自体はやはり面倒なものです。
登録にかける時間や人出が無い場合は、申請を代行してもらうという方法があります。
● 申請代行についてはコチラへ ⇒ 建設キャリアアップシステム申請代行(全国対応)
金銭的な負担はそれほど大きくはありません。
建設キャリアアップシステムへの登録や利用料として必要なものは下の方に記載していきます。
「優秀な人材が引き抜かれるのでは?」という疑念ですが、特に地方のゼネコンを中心に警戒感が強いようです。
● 引き抜きの不安のある社長さんや代表さんはコチラをご覧ください。
⇒ 引き抜きされない?CCUS登録で誰が何を閲覧できるのか
事業者(建設会社)の登録しない事によるデメリット
- 外国人の技能実習生等を受け入れられない
- 大手ゼネコンからの工事を請け負えなくなっていく可能性がある
- 公共工事の現場では義務となる可能性がある(2023年度からの動きあり)
登録するデメリットもあります、登録しない事によるデメリットも存在します。
2020年1月からは、外国人の技能実習生を新たに受け入れる場合は、事業者側も、受け入れる技能実習生側にも建設キャリアアップシステムへの登録が義務化されています。
ビザ(※)の種類で言えば技能実習だけではなく、オリンピックまでの時限措置である外国人建設就労者受入事業である特定活動や、2019年4月から新たに創設された特定技能の場合も同様に登録が必要です。
※ ここでいう「ビザ」は正確には「在留資格」といい、本来の「ビザ(査証)」とはまた別物
このような義務化への移行は、システムの登録状況が伸びなければ、今後、外国人の就労以外についても行われるかもしれません。
建設キャリアアップシステムの利用料金
事業者の登録料
登録料は資本金によって違ってきます。
資本金500万円未満で3,000円、500万円以上1000万円未満で6,000円、1000万円以上2000万円未満で12,000円、2000万円以上5000万円未満で24,000円と資本金が上がるとともに増えていきます。
ちなみに1億円だと6万円、最高額は500億円以上で120万円となります。
個人事業主の場合は資本金500万円未満と同じ3,000円で、一人親方の場合は無料です。
この、登録料ですが、どうやら2020年10月から大幅値上げとなる可能性があります。
まだ、決定ではありませんが、現行の5倍となる案が採用されるかもしれません。
これが最初の登録時と、以後5年ごとに必要となります。
ちなみに技能者登録料は現行2,500円のところが4,000円となる案です。
こちらは10年ごとに必要です。
管理者ID利用料
管理者IDを取得することで、システムにログインし、事業者情報の管理、現場の登録、技能者情報の閲覧、帳票出力が出来るようになります。
事業者登録により、自動で1人の管理者IDが付与されますが、追加取得、つまり管理者を増やすことが出来ます。
一方、事業者IDは、その事業者固有のものなので、1つの事業者に1つしかありません。
管理者IDは1人あたり2,400円で、1年ごとに必要となります。
現場利用料
現場利用料は、現場をシステム登録した元請事業者が費用負担するものです。
かかる費用は、技能者の就業履歴の登録1人1回につき3円かかります。
ピンときにくいですが、例えば10人の技能者が50日間就業すると・・
3円×10人×50日=1,500円
という計算になります。
ただ、これも2020年10月からの値上げとなりそうです。
現行3円のところを6円に倍増させる見通しです。
カードリーダーの設置
建設キャリアアップシステムに登録すると、技能者は現場に設置されたカードリーダーに建設キャリアアップカードを毎日かざして、就業履歴を蓄積していくことになります。
では、このカードリーダーは誰が設置するのでしょうか?
それは、その現場の工事の元請事業者ということになります。
元請事業者はカードリーダーという機械、それにネットの接続環境と「建レコ」というアプリをインストールする機器(パソコン、iPhone、iPad)を準備しなければなりません。
ネットの接続環境はLANでもWi-Fiでも4Gでも大丈夫です。
簡易なものなら、iPhoneやiPadとカードリーダーをブルートゥース接続することなどが考えられます。
建設キャリアアップシステムに対応したカードリーダーは以下のような機種があり、1つ1万数千円からです。
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小規模な現場が複数あり、現場ごとにカードリーダーを設置できないということであれば、現場監督などが複数の現場を巡回し、一つのカードリーダーを複数の現場で共有することも可能です。
また、どうしてもインターネット環境を用意でいない現場は、就業履歴を事後に直接システムへ登録することもできます。
ただし、事後登録した場合は、カードリーダーで読み取ったものでは無いということが識別されます。
この点については、既にお話ししましたように、来年度からはスマホでいけるようになるかもしれません。