平成31年4月から本格運用が始まり、その年末からは一気に登録数が増えてきた感のある建設キャリアアップシステム。
官民連携で作りだされ、推奨されているこのシステムへの登録は必ずしなければならないものなのでしょうか?
つまりそれは、建設会社の義務であり、強制されるものなのでしょうか?
答えは、「強制ではないものの、置かれる状況によっては義務となる」といったところでしょうか。
そのあたりを掘り下げていきたいと思います。
建設キャリアアップシステムへの登録は強制ではありません
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、人手不足と高齢化が著しい建設業界の現状を打破するために作られたシステムです。
詳しくはコチラをご覧ください。
⇒ 建設キャリアアップシステムって何?
当初は、運用開始初年度の2019年(平成31年)で100万人の技能者登録、5年で全ての技能者(約330万人)の登録を目指すと言っていましたが、初年度の登録は年末に一気に増えたものの17万人弱と目標には遠く及ばず、5年で全員なんて夢のまた夢のような状況です。
実際、建設業界で働く方にこの目標値を伝えると「建設業者をなめてますね。そんなん出来るハズがない」と断言していました(笑)。
そう、あくまでシステムへの登録は任意であって強制じゃなくて罰則もないので、そんな面倒で費用もかかる事をわざわざ取り入れないということなんです。
けど、登録によるメリットはあるんですよ。
⇒ 事業者(建設会社)のメリットとデメリット
外国人労働者を受入れる場合
建設キャリアアップシステムへの登録は確かに強制ではないのですが、冒頭で「置かれる状況によっては義務となる」と言いました。
それは、どんな場合かというと、確定的なのは外国人労働者を受け入れる場合です。
入管法で言う外国人の「技能実習」のうち、建設分野での失踪者が最も多いことから、建設分野で技能実習生を受け入れるには、建設キャリアアップシステムへの登録が要件として追加されました。
また、技能者となる外国人労働者だけでなく、受け入れる側の事業者もシステムへの登録が必須で、また建設業許可を受けている必要もあります。
ビザ(※)の種別としては「技能実習」が2020年1月1日から、それに先立って新しくできた「特定技能」が2019年4月1日から、あとは東京オリンピックまでの時限措置である外国人建設就労者受入事業である「特定活動」があります。
※ここでいう「ビザ」は正確には「在留資格」といい、本来の「ビザ(査証)」とはまた別物
以前から雇用している外国人労働者は強制ではありませんが、新たに雇い入れる可能性があるのであれば、早急に事業者登録を済ませておくべきでしょう。
建設業界における外国人労働者にまつわる問題についてはコチラをご覧ください。
⇒ 外国人技能実習生のビザと失踪と建設キャリアアップシステム
大手ゼネコン、元請けからの要請
外国人労働者を雇い入れる場合以外にも、建設キャリアアップシステムへの登録が義務的になる状況があります。
その1つが、本意ではなくても元請けから登録するように言われた場合です。
つまり、例えそれを明言していないとしても、建設キャリアアップシステムへの登録をしなければ、今後、仕事が回せなくなるという意味合いが込められているということです。
例えそうでなかったとしても、登録者が増えていけば、その中から技術力を持った会社を選ぶことが出来るでしょうから、未登録の技術者をかかえている下請けへの仕事は段々と減っていくのは自然の流れとなるでしょう。
経営事項審査への影響
公共工事を請け負うなら避けては通れないのが経審(経営事項審査)です。
建設キャリアアップシステムを活用した技術者能力評価が、令和2年4月から経営事項審査の審査基準に導入されることが決定しています。
ですから公共工事を、現在も今後も請け負うつもりがさらさらない事業者であれば関係ありませんが、例え今、公共工事を請け負っていなくても今後その可能性があるのであれば、早い段階で建設キャリアアップシステムに登録したいところです。
経営事項審査を受ける際に建設キャリアアップシステムへの登録が必ずしも必要というわけではありませんが、少しでも高い点数が欲しいところですので、経審を受ける事業者であれば、自社の事業者登録と従業員の技能者登録が必須となってくるでしょう。
公共工事への現在の影響
経営事項審査のところと内容は多少被りますが、既に公共工事への影響は出てきています。
山梨県では、事業者が建設キャリアアップに事業者登録を済ませ、その事業者が雇用する建設技能者が技能者登録済みである場合には、評価点2点を加点する仕組みを令和元年10月から全国に先駆けて開始しています。
また、福岡県や長野県も、山梨県に続いて独自の建設キャリアアップシステムの登録による評価方法を取り入れていくようです。
そして、この流れは全国的に広がっていくのでしょう。
公共工事を受注する可能性のある事業者は、ますます建設キャリアアップシステムへの早急な登録が必要となってきます。
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