建設業を営むのに建設業許可が必ず必要なわけではありません。現に、許可を取っていない建設業者はたくさんあります。
しかし、開業当初は特に必要なかったものの、事業を続けていくにつれて建設業許可を取ならければならない場合、取った方が良い場合が訪れる会社や個人事業主の方も非常に多いです。
目次
建設業許可が必ず必要なパターン
まずは、有無を言わさず建設業許可を取らなければならない場合をご紹介します。
あてはまっていれば、急いで許可申請の準備に取り掛かりましょう。
建設業許可が法律的に必要になるのは、大きな工事を扱う場合です。
元請け、下請け、孫請けの別や法人か個人事業主かも関係ありません。
では、どの程度から大きな工事なのかというと、法律に軽微な建設工事が定められており、それに該当しない工事となります。
ですので軽微な建設工事、つまり建設業許可を持っていなくても可能な工事を見てみましょう。
軽微な建設工事 | |
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建築一式工事 ※右のいずれかに該当すればOK | 工事1件の請負代金が1500万円未満(消費税込み) |
延べ面積が150㎡に満たない木造住宅工事(注1) | |
建築一式以外の建設工事(注2) | 工事1件の請負代金が500万円未満(消費税込み) |
注1)木造住宅とは、主要構造部が木造で、①住宅、②共同住宅、③店舗等との併用住宅で延べ面積の2分の1以上が居住用のもの 注2)解体工事の場合は、軽微な建設工事のみを請け負う事業者の場合でも建設リサイクル法による解体工事業の登録を受ける必要がある ※解体工事についてはコチラで詳し書いています ⇒ 解体工事許可と解体工事業登録 |
上の表の要件に当てはまらない工事は軽微な建設工事ではないので、必然的に建設業許可が必要になります。
つまり、軽微な工事にあたらない建設工事は、建設業許可がなければ請け負うことが出来ないのです。
建設業許可が必要ではない軽微な建設工事を、建設業許可が必要な大きな建設工事に言い換えるとこうなります。
大きな建設工事 | |
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建築一式工事 ※両方当てはまれば許可が必要 | 工事1件の請負代金が1500万円以上(消費税込み) |
延べ面積が150㎡以上の木造住宅工事 または 木造住宅以外の工事(面積関係なし) | |
建築一式以外の建設工事 | 工事1件の請負代金が500万円以上(消費税込み) |
※一式工事とは何か?という問題はコチラをご覧ください。
⇒ 2つの一式工事と27の専門工事
請負金額について注意すべき点
一つは消費税を合わせた金額で請負金額を見られるという点です。
消費税10%の現在であれば、税抜き450万円を超えてくると危険です。正確には454万5455円だと税込み500万円を超えます。
もう一つは請負代金が500万円未満(建築一式の場合は1500万円未満)の請負工事であっても「軽微な建設工事」に該当せず、建設業許可が必要となる場合があることです。
どのような場合かと言いますと、発注者が材料を用意する場合です。
発注者が材料を用意するのであれば、その材料の市場価格、運送費、それに請負代金を合計した金額で判断されることになるのです。
逆に請負代金が500万円以上でも許可が不要な場合があります。
それは、請負代金に建設工事以外の代金が含まれている場合です。
建設工事とは、建設業法で定められた29業種に該当するものですので、それ以外の工事であれば建設工事には該当しません。
※29業種についてはこちらをご覧ください ⇒ 建設業って何?29業種に分類
契約の分割について
よく見られるのが、建設業許可が必要となる金額を超える工事の契約を分割する手法です。
しかし、例えば600万円の屋上緑化工事を、300万円の工事2つとして契約したとしても、それは1つの工事と見なされ合計金額の600万円で判断されますので、意味がありません。
この業者さんは造園工事の建設業許可が必要になります。
ただ、その契約の分割に正当な理由があれば、それぞれの契約金額で判断されますので、建設業許可がなくてもOKです。
ただこの「正当な判断基準」というのが難しいところで、ケースバイケースなのです。
公共工事を受注する場合
ここまで、請負代金の側面からの建設業許可の必要性をお話ししてきましたが、それ以外の側面で建設業許可が必要な場合があります。
それは、公共工事の入札に参加する場合です。
公共工事の入札に参加するには、経営事項審査(経審)というものを受け、更に入札参加資格を取得しなければなりません。
そもそも経審を受けるには建設業許可業者でなければならないのです。
建設業許可は無くてもいいのに必要に迫られるパターン
法律的に建設業許可が必要なくても、許可の取得をしなければならない場合があります。
最も多いのは、元請けから建設業許可を取るように言われるパターンです。
なるべく早く取るように言われるだけの事もあれば、許可を取らなければ今後仕事を回せなくなると言われることもあるでしょう。
元請けが下請けに建設業許可の取得を求める理由は一言で言えばリスク回避でしょう。また、この辺のところは別で詳しく書いていこうかと思います。
元請けから許可の取得を求められなくても、許可がある方が良い事も多くあります。
そもそも大きな工事が取れそうだから許可を取るでは、間に合わない事が多くあります。
特に大きな工事が入る予定がなかったとしても、今まで軽微な工事しか受注していなかったとしても、許可があることで大きな工事が舞い込んでくるかもしれません。
建設業許可を取って信頼性がアップすることから軽微な工事の更なる受注にも繋がる可能性もあります。
また、信頼性アップから融資を受けやすくなるというメリットもあるでしょう。
建設業許可取得によるデメリット
建設業許可を取得した結果、良いことだけではありません。
メリットがあれば、必ずデメリットがあるものです。
建設業許可取得によるデメリットは以下のような事があります。
- 許可の取得、更新などに費用がかかる
- 許可の取得、更新、決算後の届に時間がかかる
- 許可取得後に申請内容に変更があった場合には各種変更届が必要になる
とにかく手続きが多くなりお金と時間がかかるということですね。
お金と時間の関係で言えば、行政書士に依頼すれば「費用>時間」、自分で行うのであれば「費用<時間」という図式になりますが、いずれにしてもお金と時間はかかってきます。
では、時間がかかっても費用を節約する方向で行くとして、果たして自分で複雑な建設業許可を取得することは出来るのでしょうか?